GPT技術が一夜にして禁止される可能性?‐訴訟対策で気を付けるポイントとは
GPT技術の最大のブレイクスルーとは
GPT関連の技術を追えば追う程目にする現象は、『著作権侵害の開放』に帰結する印象があります。現状ではGPTで生成される著作物の権利に対しての法整備が追い付いていない事もあり、ChatGPT技術や、画像生成AIに様々なコンテンツを作らせる事がブームになっている点は否定できません。プロンプトに呪文を入れると色々なキャラクターや、絵が出力される魅力が素晴らしいというのは否定できない事実ですし、簡単にテーマを入れるだけで、記事を書いてくれるChatGPTはゴーストライターさんたちの仕事を一気に奪い去りましたし、画像を作るGPTにしても、描画力が素晴らしく、呪文を入力するだけで色々な画像を生成してくれます。
著作権を踏み抜いている可能性
最初の頃は、狙った画像を描くために、色々プロンプトを工夫していたのですが、ミッキーマウス、熊のぷーさん、モンキーディールフィーと言うプロンプトを入力するとものの見事に、漫画とほぼ同じキャラクター達を描く事が出来てしまいました。いちいちキャラクター達のデザイン特徴を入力する必要が全くなかったのです。
今回あえて、この記事上にGPTが生成したこれらの漫画キャラを掲載する事は、無駄な訴訟リスクを減らすために差し控えますが、EdgeにMicrosoftアカウントでサインインした状態、好きなキャラクター名を英語で入力して作成させれば、カジュアルにお好きなキャラクターを描く事が出来てしまいます。
Microsoft Image Creatorの利用条件を再確認
The New Bing - Learn Moreを見る限り『Bing スレッド エクスペリエンスおよび Image Creator に関する規約』で以下のように定義されていますので、『Microsoft サービス規約、および弊社のコンテンツ ポリシーを遵守することを条件に、オンライン サービス以外の場所で、個人の合法的な非商業的目的のために作成物を使用できます。』、とあります。つまり、オンラインで表示する際には利用する事が出来ないという事を意味します。
とは言え、こちらはMicrosoft Image Creatorの利用条件のお話ですので、DALL·Eが学習時、上記で書いたキャラクター達の名前と紐づく画像を、著作権があるにも関わらず、学習データとして取り込んでしまっているのか、いないのかで大きな差分が出てくる可能性があります。この差分による訴訟時の影響が出るのが以下の情報です。
産業革命(グレーゾーンを踏み抜くか)
アメリカでは2023年1月に訴訟がスタートしています。アーティストたちが大手3社を相手に集団訴訟。画像生成AIは著作権侵害かフェアユースか?
また、Getty Imageも2月に訴訟を起こしています。(画像生成AI「Stable Diffusion」をGetty Imagesが著作権侵害で提訴、これで2回目の法的手続き)
流石に『AI画像生成ツールのなかには、生成するグラフィックスの中にGetty Imagesのウォーターマークまで入れているものもあり、そのアルゴリズムに同社の知的財産がかなり使われている』というモラルの低い開発方針は今後物議だらけになりそうですし、一発アウトになる可能性も否定できませんね。
AIによる成果物の質を高めるためには、過去の名作や著名な作品を取り込んで画風を学習させる必要がありますが、現時点で著作権フリーの作品のみを集めて学習用のデータを作る事は、インターネットから情報を集めようとすればするほど困難を極める事が想像できますし、AI特有のGarbage in Garbage out(ゴミを入れたらゴミが出てくる)法則からすると、有料画像群を学習させない事には、ユーザーが満足するアウトプットを作り出す事が難しい等は発生しそうです。
過去に実在した怖いお話
小学生が描いたミッキーマウスですら、ディズニーさんからクレームが入って訴訟前提で対応を迫られて消させられている現状があります。訴訟になってからだと、対応する裁判の費用等を考慮すると、エンタープライズでの利用は一旦控えておくほうが良さそうです。
また、もしGPTで制作した画像、デザインが既存IPを侵害しても問題ないとなった日には、マリカーの2号、3号がガンガン世の中に出てくる事とほぼ等価になるため、やんちゃな皆さんが、これまたGPTがデザインしたから合法です!と法廷闘争に持ち込まれる暗黒の未来も想定されます。もちろん、前回は最強の法務部を擁する任天堂様が勝利しています。
マリカー訴訟では、任天堂様が勝訴していますが、実体はマリカーとは関係ありません!というマリカーというキーワードをしっかり入れ込んだウェブサイトで集客して、コスチュームはレンタルしてません!(自分で買ってきてね側に倒していると思われる)、ちゃっかりビジネスは継続している物と思われるので、彼らの商魂たくましさは凄いなと思いつつ…
彼らにGPTを与えたら…何をやり始めるかは安易に想像できそうです。
司法判断は
2023年1月、2月の訴訟はまだ結果が出ていない状態ですが、数か月~数年の期間が必要になるようです。
ポイントになる点は、学習データにウォーターマークの入った画像を食わせているという間抜けな点だったりはする気がしますが、どうしてもこの手のスタートアップ企業がやってくる『やんちゃ』な法律踏み抜き行為はアメリカ企業の多い気はします。
Uberにしろ、Airbnbにしろ、ほぼ黒なビジネスにインターネットを被せて合法にしてしまった代物でもありますし、アメリカ特有の『モラルは置いておく、怒られるまで(司法で白黒つくまでやる!)』というビジネススタンスは、(個人的には受け付けられないのですが)アメリカでは成立する理論なのかもしれませんね。
一夜で全てが変わる可能性
ここ数カ月~数年でGPT生成物の著作権が全てアウトになった場合、GPTの利用を含め、生成物を取り除く作業が待ち受けています。個人での楽しみの範囲での利用はある程度良いとして、法人での利用をする場合、特に画像系の生成AIには注意が必要になるかもしれません。
これも全て司法判断ではありますが、Microsoftさんですら、法人用の商用利用を許可していない点は、やはり注意をしておく必要がありそうです。
GPT生成画像を利用する際の注意点
司法判断次第で大きく分岐する事が想定されますが、2023年4月段階では
- 個人の楽しみ以外でGPT生成画像は使わない
- 特に商用利用したり、キャラクターデザインにする等はリスクの高さを考えておく(訴訟されなければ問題はないかもしれませんが、司法判断次第でどうなるかは分からないです)
- 任天堂、ディズニー(ミッキーマウスの著作権が実は2024年末に切れる説もありますが)さんが、訴訟を開始して、結論が落ち着くのを待つ(Gettyさん訴訟の結果を待つのも良いです)
どうしても利用したい場合
- GPT系のアプリで商用利用を許可するサービスを使う
- いつでも画像を削除できるように事前にどの画像がGPTで作られた物かを管理しておく
あたりをご検討いただく事がお勧めです。
免責事項
本記事は、2023年4月現在での得られる範囲の情報を個人の視点で記載している物となり、本記事を根拠にGPT生成済画像を利用する際の判断は行わないでください。本記事はゆるふわな参考記事としてお考えいただき、詳細は皆様のご所属先の企業法務部様にご質問いただく事をお勧めいたします。
本記事を読んでGPT生成物を利用する判断を行った場合の責任は皆様自身および所属企業様にあり、本記事は一切の責任を負いません。(どう読めばこの記事読んで使っていいんだもん!と言う判断を出来るかは全く理解できませんが…)
個人的には安全に倒した運用にしたがる傾向があるため、皆様の会社様の方針と完全一致しない可能性もございます。ご理解賜れましたら幸いです。