大学が即戦力のハイテクプロフェッショナルを生み出す5つの方法

本を読んでテーブルの近くの椅子に座っている青いジャケットを着ている女性

 歴史的に大学は、研究・学習を目的とした機関であり、職業訓練校でもないため、キャリア志向はあまり強くない。多くの大学において、就業後に役に立つカリキュラムを提供し始めてはいる。しかし、今日の大学の多くは、21世紀のデジタル変革を考えると、現在の雇用市場に必要な知識を欠いている。

 予期せぬCOVID-19の大流行により、デジタルスキルの必要性が高まる一方で、多くの企業がオンラインに移行し、リモートで働く従業員の勤務地は会議室から居間に移った。また、一部の組織では、円滑で安全な運用を可能にするためにITやサイバーの専門家のニーズが高まっている。並行して、eコマースが急増し、それに伴ってデジタルに精通する必要性が高まった。

 日本国内の教育に関しては、伝統的に人文系が多く、結果、多くの卒業生は雇用主が必要とする能力を即戦力としては持っていないという現実に直面する。

 教育と職業能力の不一致にもかかわらず、多くの雇用主は依然として学歴要件を重視する傾向が強い。雇用主は、大学の学位を、学生のトピックへのコミットメント、長期的な目標の達成、または知識と学習への欲求の尺度と見なすことに起因していると思慮しています。

 大学はこのギャップをどうやって克服するのか。技術職のための専用の継続教育センターを追加することで、大学は訓練を受けて働き始める準備ができたハイテク専門家を生み出すことができる。

以下は、ハイテクプロフェッショナルを生み出す5つの方法である。

1. 人文系学部に情報系のマイナー専攻を追加する事

 大学卒業者の魅力を高める方法の一つとして、文学部や法学部など、コンピュータ科学以外の分野の学生にハイテク関連のコースを提供することが挙げられる。これは、アメリカの大学等で、メジャー、マイナーとして、専門領域を2つ持つ教育方針から着想を貰っているが、コンピュータ技術に関してはある程度の知識は必要であるため、18才~22才の若い間に学習をしておく事は大きなメリットになるだけではなく、仮にアカデミアに残った場合でも役に立つスキルを習得できると考える。

 大学が近い将来に消滅することはない。しかし、雇用者だけでなく学生にとっても価値を高めるためには、変化が必要である。Code.orgによると、(海外では)ハイテク職は新卒者の中で最も高い報酬を得ている。にも拘わらず、海外ですら大学を卒業してコンピュータサイエンスの学位を取得するのは3%未満であり、STEM (科学・技術・工学・数学) を卒業してコンピュータサイエンスの学位を取得するのはわずか8%である。

 大学は職業訓練校ではないと言う点は理解できるものの、何年も学術的な勉強を続けるよりも、すぐに就職できるスキルを身に付けることは生活の維持の観点では、必須になっている。
 資格として持っていれば良いという訳ではないが、基本情報・応用情報試験を学内での合格目標にすると思慮している。(データサイエンティストの多くがITの基本知識がなく、頭を痛める事も多い)

2. 市場ニーズに合ったコンピューターサイエンス関連のトレーニングを追加する事

 一部の大学では、コンピュータ、データサイエンス等、労働市場が希望している授業を提供し始めており、学生が雇用される可能性を高めるアプローチをとっているケースもある。しかし、スキルベースのトレーニングでは、博士号を取得した卒業生であっても、ハイテク分野で働く準備ができていないことが多い。例えば、サイバーセキュリティの欠員は数10万人に上るが、 「大学のコンピューターサイエンス卒業生は必要なスキルや実地経験が不足していることが多い」 ため、欠員が埋まる事はない。

 現在の大学プログラムは、必ずしも雇用主の要求を反映するようにカリキュラムを適応させるとは限らない。大学入試時には、大学入学共通テストの情報関係基礎科目で用いられる「大学入学共通テスト手順記述標準言語(DNCL)」という謎の言語を教える始末でもあり、そんな暇があるなら、Pythonか、Rを教えておいて欲しい思いはある。

 大学でのマーケティングの授業の大半がコトラーで停止してしまうのと同様、コンピューターサイエンスも、時代遅れなテクノロジーの集積になりかねない。学生向けに 「ハイテク集中トレーニング追加プログラム」 を提供することは、実践的なスキルを植え付ける積極的な方法になりうる。これは、学生のハイテクキャリアにおける卒業生の就職成功率を向上させるためのウィンウィンの解決策となり得る。

 ※DNCLは最近知ったのだが、当方の子供が高校に入るまでには廃止されている事だけを期待したい。

3. 企業ニーズに合わせたスケジュール

 予期せぬCOVID-19の大流行は、ハイテク企業と高等教育機関の双方にさらなる労働力問題をもたらした。ニューハンプシャー大学のポール・ル・ブラン学長は、経済危機には迅速な対応が必要だとフォーブスに語った。4年制の学位は贅沢であり、労働力の需要に対応するために必要な知識とスキルを提供するには不十分である可能性がある。彼は、数年ではなく数か月で人々を最新の状態にする制度を求めている。

 ハイテク産業に必要な製品化までの時間を短縮するために、COVID-19大学後のトレーニングでは、雇用主、大学、採用担当者に知識の共有を強化し、教育プログラムを再パッケージ化し、大学とハイテク産業の間のより緊密な協力を構築することを求める。

4. ハンズオンの機会を提供し、スキルギャップを減らすこと

 リモートワークが普及したからこそではあるが、週に1日、1日2時間等(本来4時間位を好まれる気もするが)のインターンシップを受け入れる企業とのパイプを増やす事。定期的にインターンシップ先の条件を学生からヒアリングし、作業者としての単純業務ばかりを安価にやらせている企業の案件は断る事が重要にはなるが、理論を100回聞くより、1回の現場経験のほうが得られる事は多いため、大学として、企業とのパイプ構築を行う事をお勧めしたい。

 また学生にとっても、ある程度の給料をもらいながらの活動となるため、生活の安定にも寄与できると考えています。

 ※昔箱崎にある大手企業ではじめてインターンシップを導入してもらったとき、広報側でインターンシップの目的は『採用です!』と宣言してクレームが来まくって同年のインターンシップが見送られた事を思い出しつつ…

5. ビジネスコミュニケーション能力を教える事

 21世紀の雇用主は、迅速に学習でき、自発的で、優れたコミュニケーション能力と対人関係の仲介者となる候補者を求めている。コミュニケーションスキルには、執筆、リーダーシップ、チームワーク、問題解決なども含まれる。ハイテクの仕事はモニター相手にキーボードをカタカタやっているだけでの仕事ではない。これには、他の利害関係者と効果的に話をしたり、チームを管理したりする能力が含まれており、若手の従業員がより責任のある役割に移行したい場合に役立つ。

 理系出身者や、企業の偉い人達(忙しい人が多い)は、文章が構造化されている事を好む傾向があり、この様式美をクリアしていない場合、思考回路がパニックを起こして理解しようと思う事自体を停止することが多い

 また、SI業界におうおうにして発生する『なぜなぜハラスメント』を発病するトリガーともなりうるため、大学生のうちに以下の本を読ませておく事を推奨したい。尚、この書籍はKindle Unlimitedに加入していると無料で読めるのでお勧めです。

* * *

 大学の役割は、文化的、財政的、産業的な出来事によって変化し、進化し続けている。今日のハイテク雇用市場を考えると、産業と大学の格差を縮めるには時間が重要である。

 上記で概説した、大学が即戦力のハイテク専門家を生み出すのを支援する5つの方法は、現在の状況に適応し、将来に備えるために利用可能な多くの方法の一部にすぎないが、営業会社のインターンシップをやってみる等、学生の生活レベルを高めつつ学業を充実させる方法にもつながるためIT、ハイテク業界だけではなく様々なシーンでご検討いただける事を祈っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です